あの丘で、シリウスに願いを
第三章 シリウスの花マル
まことが横浜に来て三ヶ月。

クリスマスソングが街中に流れて、あちらこちらに美しいイルミネーション。


「ごめんね、まこと先生」

妻が臨月となり、救急外来のエース水上医師が毎日そわそわしていた。


「私なら大丈夫です。それよりいよいよですね、水上先生」


落ち着かない水上は、このところ9時から17時まで勤務、土曜日曜も休みを取っていた。
夜間や休日に陣痛が始まったらと、気が気じゃないらしい。


「洸平、五時だぞぉ。上がれ」
「すまない、翔太。あと、頼む」
「こっちは気にすんな。明日が予定日だろ?どうなんだ、産まれそうか?」
「まだみたいだ」
「そっか。俺もっと産科の勉強しときゃ良かったなぁ。俺が取り上げたいよ」
「出産の見学中に気分悪くなって逃げ出した奴がよく言うよ。じゃ、悪いな、お先に」


水上と翔太は、同級生。学生の頃からの長い付き合いだ。互いをよく知っている。

水上がバタバタと帰って行った。

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