復讐目的で近づいた私をいくらで飼いますか?
自覚と結び

新は言った。


『……好きだよ』


え、私を?

先日のその言葉が色濃く頭から離れなくて、私の心を揺さぶる。












「………なんだよ…? 俺、何か睨まれるようなことしたか…?」

「別に睨んでなんかないよ…! 私の婚約者様は今日もかっこいいなぁなんて思いまして!」

「……………変なものでも食べたか…?」


この反応ですよ?
相変わらずの塩対応で、きっと新は気持ちが盛り上がって思ってもないことを口走ったんだと思った。というか悟った。


でも、ほんの少しの可能性を見て見ぬフリが出来なかった私は、ついつい訊いてしまう。


「新って私のことが…………好き…なの?」


あれ…?……おかしいな…。


「………」


いつもの、作戦の内の単なる質問なのに。
好きって言わせて振るための、復讐のための質問なのに。


「顔、赤いぞ」

「……そんなこと、ない…」

「声震えてる」


バクバクとうるさい心臓。キュゥと喉の奥の方で締まるような感覚と高揚感。


「今日の晩ご飯どうする?」

「答えて…流さないで…」


新の眼差しが優しい。私のことを丸い眼で見つめてくる。

その視線の意味は…?

調子が狂った。

あの披露宴の夜から私の心は忙しない。


「婚約者だし、ある程度は。」

「何そのアヤフヤな感じ…」


愛のない結婚とか望んじゃうタイプの方ですか?

新ならあり得る。


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