カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
キスを楽しんでいると、総司の携帯端末が震えた。真鍋が迎えに来たようだ。

清良をソファにそっと下ろし、端末を耳に当てる。

「俺だ。わざわざすまない。ああ、今日は起きていた。……昨日は昼から眠れたからな。……ああ、最高だった」

不穏なトークが聞こえてきて、清良は頬を真っ赤に染める。まるで昼間っからいかがわしいことをしていましたとカミングアウトしたようなものだ。

総司の服の裾をちょんちょんと引っ張り、口には出さずかぶりを振って「やめて、恥ずかしいから」と訴る。

そんな清良を見て、総司はフッと笑みをこぼした。

通話を終えた総司は「惚気るくらいいいだろう。新婚なんだから」と悪びれもせず言い放ってソファから立ち上がった。

「清良。行ってくる。来週また戻ってくるから、それまでいい子にしていてくれ」

「わかりました。行ってらっしゃいませ」

門の前まで総司を見送り、去りゆく車に向かって手を振った。

車が見えなくなると、途端に清良の世界は静まり返り、冬の海のように厳しくて暗くて寂しげな情景に早変わりする。

(さっきまで、あんなに満たされていたのに)

どうやら愛情も、寝だめや食いだめと同じく、ためておくことはできないようだ。

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