ペトラは現実主義だ。

現状を嘆くことはあっても、過去に縋ることはない。

突然の国外追放と絶縁には驚いたが、大して未練はなかった。

ルークとの破局は悲しかったけれど、それも運命と受け入れている。

ただ、途方に暮れていた。

貴族社会の頂点に君臨する公爵家から一転してホームレスになったのだ。

生活する術が分からなかった。

「ここからどうすればいいのやら……」

とりあえず、ペトラは町に到着した。

ポロネイア王国に最も近い小さな町〈ココイロタウン〉だ。

それはペトラの知る集落とは大きく違っていた。

足下に綺麗な石畳はなく、砂埃の舞う砂利道が広がっている。

建物も白塗りされた石造りではなく、適当な木材で作られていた。

「可愛いねぇ」

「よかったら俺と酒でも飲まない?」

「どこから来たの? 彼氏とか居る?」 

立ち尽くすペトラに、男が入れ替わりで声を掛けてくる。

しかし、連中はほどなくして去っていた。

ペトラがあわあわして会話にならなかったからだ。

脈がないと判断した。

彼らの存在は、ペトラにいくばくかの安心感を与えた。

今世における自分の容姿が秀でていることを再認識させたからだ。

(一般社会ならこの容姿は強烈な武器になるはず。前世は容姿が足を引っ張ってハードモードだったけど、今世ならこんな状況でもイージーモードにできるはず!)