ポロネイア王国とバーランド王国を繋ぐ国境の関所。

そこに、ペトラは馬車で運ばれてきた。

荷物は数日分の携帯食のみ。

金銭や宝石の類は一切ない。

服も煌びやかなドレスではなくなった。

今では庶民的な黄ばんだ布の服を着ている。

絶世の美女と謳われていた頃の面影は残っていなかった。

「忘れ物はないな? 後で思い出しても取りに戻ることはできないぞ。そなたは国外追放の身。二度とポロネイア王国には入国できぬ」

「はい、大丈夫です」

「ではさっさと進め」

関所を通ってバーランド王国の国土へ向かう。

そんな彼女に、1人の兵士が話しかけてきた。

無精髭を生え散らかした男だ。

彼はポロネイア王国に属する関所の兵士を仕切る兵長である。

「ポロネイア王国に戻りたくないか?」

「そんなことができるのですか?」

男は「できるさ」とニヤリ。「ただ、ここは人の目があって話しづらい。詳しく知りたいならついてきてくれ。その方法を教えるし、手助けもしよう」

ペトラにとって、男の提案は僥倖だった。

バーランド王国でどう生きようか途方にくれていたからだ。

ポロネイア王国であれば、多少は勝手が分かる。

だからペトラは、縋るように男の後ろへ続いた。