追放された公爵令嬢、隣国で成り上がって全てを見返す
「この辺でいいか」

兵舎の裏で男が止まった。

すごく狭い場所で、周囲に人はいない。

「王国に戻る方法は単純だ。俺が兵士に命令すればいい。兵士というのは上の命令には絶対服従だから、刃向かう者はいない。俺達が『バーランド王国へ行った』と言えば、王都の兵士は捜索しないだろう。仮に町で見かけられても、別人だと言い張れば問題ない。公爵令嬢様が庶民に扮しているなどと思う者はいないから」

その通りだ、とペトラは思った。

「本当に助けていただいてよろしいのですか? ご迷惑をおかけすることにならないでしょうか?」

「そりゃあ、迷惑はかかるよ。バレたらクビじゃ済まない。もしかすると国家反逆罪に問われるかもしれない。普通ならそこまでする義理はないさ。公爵様は俺達の給料を減らしこそすれ、優遇してはくださらなかったし」

「じゃ、じゃあ、どうして……」

「タダじゃないからさ」

「えっ、それって、どういう……」

固まるペトラ。

男は下卑た笑みを浮かべた。

「リスクを冒す見返りに、気持ち良くしてくれってことさ」

男はペトラの手首を掴むと、自分の股間へ近づけていく。

そこでペトラは、ようやく、男が何を考えているのかが分かった。
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