小悪魔王子に見つかりました
寧衣くんと新しいお友達

「ほ、本当に、変じゃないかな」

教室まであと数メートルというところで足を止めてそういえば、

一歩分私の前を歩いていた寧衣くんが振り返った。

「それ何回聞くの?かわいいから安心してって」

「うっ、」

まるで口癖のように寧衣くんが「かわいい」っていうから。

「かわいい」の意味を改めて調べたくなる。

もしかして、私が知らない間に、違う意味を持つようになったんじゃないかって。

だってやっぱり信じられないから。

中学の頃、私の自尊心はズタボロにされてしまった。

褒められても何か裏があるんじゃないか、本当はそんなこと思ってないんじゃないか、

と人のことを疑うようになって。

「大丈夫」

寧衣くんはそう優しく笑って私の背中に手をおいて、教室に向かうように促した。

「俺がそばにいるから」

寧衣くんのそんな声が耳に届いたのと同時に、彼の手によって教室のドアが開けられた。
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