契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
不可解なプロポーズ
「ここ…なの…?」

 孝也が頷いたのはわかっていても、まだ信じられなくて晴香はもう一度確認する。
 孝也がもう一度頷いた。

「気に入ってくれたみたいで、うれしいよ」

「で、でも孝也…ここは…」

 "孝也の家じゃない"と、言いかけて晴香の頭に浮かんだのは、ついさっき見た使われていない個室、それから独り身にこのリビングは広すぎると言った孝也の言葉。
 たしかにここなら、もうひとり誰かが住むくらいわけないだろう。そういうスタイルの賃貸が増えているというのは話に聞いたことがある。
 晴香は楽しげに微笑む孝也をジッと見つめて、確認するように問いかけた。

「…つまり、ルームシェアってこと?」

 ルームシェアの一番の利点は、低コストで条件のいい物件に住めるということ。たしかに節約しながらそれでもどうしても市内に住みたいならそんな選択肢もありかもしれない。
 でもそれにしても、ここの部屋の家賃は月々にかかる費用を折半しても…いや四分の一にしてもらっても払えそうにないけれど。
 孝也が少し考えるそぶりを見せてから、口を開いた。

「ルームシェアか。…まぁ、それもありなのかもしれないけど」

 そう言って、おもむろに立ち上がると、同じく立ち上がったまま予想外の展開に動けないでいる晴香に、一歩近づいた。
 そして晴香の両腕に優しく触れて、再び晴香をソファに座らせると、自分もそのすぐ隣に腰を下ろす。
 ふわりとシトラスの香りが晴香の鼻を掠めた。
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