王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
1章 責任と結婚と求愛と
1章 責任と結婚と求愛




あれから社員証を受け取った私は、平謝りしたのち上質なインテリアに囲まれた社長室に案内された。

病院に連れていこうとしたら物腰柔らかに拒まれてしまうし

かと言ってあの場で帰るわけにもいかないし。


『せめて手当てをさせて下さい!』

と申し入れたのは三十分ほど前のこと。


怪我が大したこと無かったのは不幸中の幸いだった。



救急箱から冷却シートを手にした私は、社長椅子に腰を掛ろした美術品のような顔を、覗きこんだ。


あまりの美しさに、眼鏡が弾き飛びそう。


しみひとつ無い陶器のような真っ白で滑らかな肌。

鮮やかで大きなコバルトブルーの瞳に縁取る金色の睫毛。

ツンとした、薄いのに柔らかそうな桃色の唇。

通った鼻梁の真ん中に赤い痕がついていて、小さな傷はすでに消毒してテープが貼ってある。

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