王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
2章 眼鏡と笑顔と三ヶ月と SIDE永斗
2章 眼鏡と笑顔と三ヶ月  SIDE 漆鷲 永斗




『恋』―――

それは特定の異性に強くひかれて、深く想いを寄せること。

だとしたら、僕の恋は、就任した日からはじまっていたんだろうか。



「みなさん、おはようございます。
本日から、代表取締役社長に就任します、漆鷲永斗と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」


一月の半ば。

レインボーヒルズタウン内にあるオフィスビルの本社。三十ニ階。

英国紳士のような笑み貼り付けた僕は、フロアごとに就任の挨拶周りをしていた。

ホールディングス会長である祖父からの命令で、再び本社勤務を命じられたのは数カ月前。

長い間の海外勤務を経てようやく日本に戻ってきた。

これからは日本のフーズに、新たな風を取り入れ、成長させなくてはならない。


もともと、漆鷲財閥というのは、この『漆鷲フーズ』からはじまったもの。

それがどんどん大きく成長し、財閥という形に変化し。

そして解体後はホールディングスという企業に形を変えて、今では『漆鷲フーズ』という一つの傘下企業として存在している。

もう今年で六十年だ。

今年はその記念すべき年ということもあり、ホールディングスの方でも様々なイベント企画し、消費者の購買意欲をはかる策略を練っている。

もちろん僕もだ。

多忙な一年になりそうだが、いい刺激になりそうだ。

< 34 / 489 >

この作品をシェア

pagetop