王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】


「⋯⋯彼女、随分顔が真っ赤だったようですが」


セルフレームの眼鏡をギラつかせた島田が、軽蔑した視線を僕に向けてくる。

⋯⋯言い訳ができない

キスをした後の彼女は、トマトよりも真っ赤で、瞳をうるうるさせたままに帰っていった。

正直、島田から隠そうと思ったくらいだ。


「野暮なことは聞かないのが礼儀だよ。彼女を送ってくれてありがとう、島田」


そうごまかすと、島田はセルフレームの眼鏡を上げて、嫌味たっぷりな視線を向けてくる。


「濃密な時間をお過ごしだったようなので、出発までにしっかり仕事を終わらせて下さい。」

「はいはい」


すきのない敏腕秘書が差し出した書類を受け取りながら、軽く返事をした。

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