友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
第2章 気持ちの芽生え
まだ幼かったころの私は、泣いているときにただ渉が隣にいてくれることに心地よさしかはじめは感じていなかった。

何も言わず、私がただ泣き止むまで待っていてくれる。

いつの間にか、渉の隣が私には居心地がよくなっていった。

香澄の隣ではいつも、香澄がまぶしくて自分に対する劣等感と、影の存在である私が光である香澄を邪魔しないように、香澄の迷惑にならないようにとどこかで気をつかっていた私。

なのに、渉の隣では唯一私が私らしくいられる。

緑ヶ丘公園は私の家から近くて、両親に気づかれることなく部屋の窓から抜け出しては夜に展望台まで行っていた。

私が展望台に行くと、待ち合わせたわけではなくいつも突発的に行くのに、かなりの確率でそこには渉がいた。
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