ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
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確かに立ち止まってる場合じゃない。私だって、先へ進む勇気を持たなきゃ。
夏雪が私に向けてくれる気持ちには、嘘も迷いもないと思う。あの夜の出来事は今思い返しても赤面しつつにやけてしまう程、ドキドキして幸せな最高の瞬間だったと思う。
それでも結婚を躊躇う理由は、きっと「周りの目」とか「評判」なんていう曖昧なものを気にしてるせいじゃない。
私はきっと、夏雪が信頼を寄せているこの人に認められたいと、心の底では願っているのだ。可哀想なアヒルだと思われたままなのは、嫌だ。
「九重さん、最近よくいらっしゃいますね、もしかしてお暇なんですか?」
「あのねえ矢野さん。あなたの護衛も仕事のうちなんですよ」
「何だか監視されてるみたいですね」
九重さんは顔をしかめて「矢野さんはほっとくとトラブルに巻き込まれるから、どちらも同じですよ」と言った。
今ではもう、初めて会った時よりずっと打ち解けて、お互いちょっとした軽口くらいなら聞けるようになっている。
「そういえば、真嶋家の家系図を撒いてる犯人って、結局見つかってないんですよね」
「そうですね…ネットで情報を匂わせているだけなので表立った取り調べもできないですし、見つけるのは難しいと思います。
だからこそ、夏雪様は矢野さんの身に危険が無いように配慮されてるんですよ」
「そのことなんですけど。…私、犯人は世間一般を騒がせるのが目的だとばかり思ってたんですけど、違ってたんですね。」
「いえ、犯人の目的はわかっていませんが」
「でも何も知らない人にはわからない程度の匂わせ方しかしてないんですよ。注意深く『安全な』情報だけを選んでいるように見えます。だから、夏雪がパパラッチの被害に会うこともない」
私が家系図の話題をずっと続けているので、九重さんが不審そうに眉をしかめる。
「これまではそうでしたけど、今後も同じとは限りません」
「いえ、きっと大丈夫だと思いますよ。
だって犯人は、情報を面白おかしくばら蒔いて楽しんでるわけじゃないし。
むしろ、『私に』その情報を知らしめるのが目的だったように思えるんです。
夏雪は初めからその事がわかっていたから、私の安全を気にしていてくれたのかなって。」
「恋人である矢野さんに警告してるということですか?
ふふ、矢野さんは探偵ごっこがお好きなんですね。」
「だって仕事辞めて暇なんですもん。
私はちゃんと犯人の意図通り警告を受けとったから、もう酷いことは止めてくれればいいのに。…犯人にそう伝わればいいんですけどね」
「あはは、矢野さんのような性善説に立った人ばかりなら、世の中平和でしょうね」
九重さんの瞳が三日月のように細くなる。
「…そういえば、矢野さんの好きな『おーくん』、でしたっけ?ハロウィンのイベントでまたベリーヒルズビレッジに来るみたいですね」
「そうなんですか?クロエを誘って見に行こうかな」
「すっかりクロエさんと仲良くなったんですね」
「はい。九重さんもクロエに会いたかったら一緒に行ってもいいですよ?」
「ですから、私は遊びでここに来てるんじゃないんですよ」
九重さんは呆れ顔でため息をつく。
夏雪が私に向けてくれる気持ちには、嘘も迷いもないと思う。あの夜の出来事は今思い返しても赤面しつつにやけてしまう程、ドキドキして幸せな最高の瞬間だったと思う。
それでも結婚を躊躇う理由は、きっと「周りの目」とか「評判」なんていう曖昧なものを気にしてるせいじゃない。
私はきっと、夏雪が信頼を寄せているこの人に認められたいと、心の底では願っているのだ。可哀想なアヒルだと思われたままなのは、嫌だ。
「九重さん、最近よくいらっしゃいますね、もしかしてお暇なんですか?」
「あのねえ矢野さん。あなたの護衛も仕事のうちなんですよ」
「何だか監視されてるみたいですね」
九重さんは顔をしかめて「矢野さんはほっとくとトラブルに巻き込まれるから、どちらも同じですよ」と言った。
今ではもう、初めて会った時よりずっと打ち解けて、お互いちょっとした軽口くらいなら聞けるようになっている。
「そういえば、真嶋家の家系図を撒いてる犯人って、結局見つかってないんですよね」
「そうですね…ネットで情報を匂わせているだけなので表立った取り調べもできないですし、見つけるのは難しいと思います。
だからこそ、夏雪様は矢野さんの身に危険が無いように配慮されてるんですよ」
「そのことなんですけど。…私、犯人は世間一般を騒がせるのが目的だとばかり思ってたんですけど、違ってたんですね。」
「いえ、犯人の目的はわかっていませんが」
「でも何も知らない人にはわからない程度の匂わせ方しかしてないんですよ。注意深く『安全な』情報だけを選んでいるように見えます。だから、夏雪がパパラッチの被害に会うこともない」
私が家系図の話題をずっと続けているので、九重さんが不審そうに眉をしかめる。
「これまではそうでしたけど、今後も同じとは限りません」
「いえ、きっと大丈夫だと思いますよ。
だって犯人は、情報を面白おかしくばら蒔いて楽しんでるわけじゃないし。
むしろ、『私に』その情報を知らしめるのが目的だったように思えるんです。
夏雪は初めからその事がわかっていたから、私の安全を気にしていてくれたのかなって。」
「恋人である矢野さんに警告してるということですか?
ふふ、矢野さんは探偵ごっこがお好きなんですね。」
「だって仕事辞めて暇なんですもん。
私はちゃんと犯人の意図通り警告を受けとったから、もう酷いことは止めてくれればいいのに。…犯人にそう伝わればいいんですけどね」
「あはは、矢野さんのような性善説に立った人ばかりなら、世の中平和でしょうね」
九重さんの瞳が三日月のように細くなる。
「…そういえば、矢野さんの好きな『おーくん』、でしたっけ?ハロウィンのイベントでまたベリーヒルズビレッジに来るみたいですね」
「そうなんですか?クロエを誘って見に行こうかな」
「すっかりクロエさんと仲良くなったんですね」
「はい。九重さんもクロエに会いたかったら一緒に行ってもいいですよ?」
「ですから、私は遊びでここに来てるんじゃないんですよ」
九重さんは呆れ顔でため息をつく。