茉莉花の花嫁
マヌケな顔をしている恋人をその場に置くと、清瀬は茉莉花を連れてレストランを後にした。

もうこの時点でわかっていたはずだった。

自分は茉莉花を好きなんだと、わかっていたはずだった。

だけども…自分は大正時代の人間で、呪いをかけられているから見た目の年齢は茉莉花と同い年か少し年上のように見えるかも知れないが、かなりと言っていいほどに年齢が離れている。

そのうえ、茉莉花と恋に落ちたら自分は死ぬ運命にある。

――あなたを、好きになってしまったから…です

呪いをかけられた自分への同情じゃないことはわかっている。

だけども、自分の運命に茉莉花を巻き込みたくなかった。

何より、自分が死んだ時に彼女が悲しい顔をするのは見たくない。

清瀬は自分の気持ちと置かれた運命に両手で頭を抱えた。
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