茉莉花の花嫁
(見られた…!)

1番見られたくなかった人に、1番見られたくなかったところを見られてしまい、茉莉花は両手で頭を抱えたくなった。

「えっ、誰…?」

見知らぬ人物の登場に、熊元は訳がわからないと言う顔をしていた。

それが腹立たしくて、
「あなたのせいよ!」

茉莉花は熊元に向かって怒鳴った。

「あなたのせいで、清瀬さんに誤解されちゃったじゃない!」

怒鳴り散らしている茉莉花に、熊元は申し訳ないと言うように目を伏せた。

「あなたとはもう絶対にやり直さない!

だから、早く私の前からいなくなってよ!」

その姿はまるで鬼のように怖くて、熊元はその場から逃げ出した。

こんなにも大きな声で泣きたいと思ったのは、今日が初めてかも知れない。

だけども、今は泣いている場合ではない。

「――行かなきゃ…」

清瀬の後を追うために、茉莉花は走り出した。
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