茉莉花の花嫁
こんなにも走ったのは、高校の時のスポーツテスト以来かも知れない。

「一体、どこに…?」

茉莉花は何も考えずに、ただ走り続けた。

本能が赴くままに…と言う言い方はおかしいが、それでも清瀬を探した。

(伝えなきゃ、清瀬さんに私の気持ちを伝えなきゃ…!)

茉莉花は清瀬を探すために走った。

結ばれたその瞬間に、自分は死ぬ運命にあると、清瀬は言った。

(何も言えないまま、清瀬さんに何も伝えないままは嫌だ…!

清瀬さんが私のせいで死ぬのは嫌…だけど、告白もできないままで清瀬さんが死ぬのは、もっと嫌だ…!)

早く清瀬に会いたい。

一刻でも早く、清瀬に会いたい。

清瀬に会って、自分の気持ちを伝えたい。

そう思った時、
「――あっ…!」

探し続けていたその人を見つけた。
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