「どうぞこちらへ」

案内されたリビングには、まるでシンボルであるかのような大きな振り子時計が存在を主張していた。

「ここでお待ちくださいね。今お茶をご用意しますから」

私たちを残して、咲枝は部屋を後にした。

「広いね。私の想像以上。この時計とか、雰囲気があって素敵」

さっきの蓮の表情が気になって、少しだけ明るめの声を出す。蓮も時計に目を向けた。

「今は切ってあるけど、僕が幼い頃はこの時計の音はなるようになっていてね。いきなり大きな音が鳴るから怖くて。この部屋にいる時はいつも大人にひっついていたよ」

苦笑する蓮に、思わずその様子を想像してしまう。大人から見たら、さぞ可愛かっただろう。

「あっ、桃香、想像してただろう?」

隠すようにして笑ったのにバッチリばれていたようで、蓮が冗談で怒ったふりをしてくる。

「ごめんなさい。可愛かっただろうなあって」

だめだ。堪えきれなくて笑いが漏れてしまう。蓮はそんな私に「こらっ」と言いながら優しく小突いてきた。