気まぐれな猫と俺様束縛系飼い主のちょっと危険で甘い生活
顛末
引っ越ししたその日の夜、私は蓮と共に黒瀬組に来ていた。

今の私の姿は、本来の夏木玲の姿。

組の人達は、誰だ!?と蓮と並んで歩く私に驚きの目は向けるものの、
敢えて聞いてくるものはいなかった。

「蓮、何か皆驚いた顔してるよ。」

「あぁ。」

「そりゃあ、そうだろう。蓮が女を隣に並ばせて歩く上に、腰に手まで
 まわしてるんだ。俺だって初めて見るぞ!
 ましてや、実家に女を入れるのも初めてのはずだ。」

私達の後ろを歩く、鳴井恭が楽しそうに話す。

「えッ!?そうなの?」

「あぁ。」


まぁ、今回はいろいろ大西組の事で話があるという事で呼ばれたのだが、
鳴井恭の話を聞いたら女としてはやっぱり少し嬉しい。

私の気持ちを知ってか知らずか、蓮がぽつりと耳元で

「今回は話があると呼ばれてきたが、ついでにお前を親父達に紹介する。」

「・・うん。」

蓮がそういう気持ちで私を連れてきてくれた事に、ついでとはいえ嬉しい。


そんな事を思っていると、案内してくれた組員の人が襖の前で止まった。

「親父、蓮さんがいらっしゃいました。」

「入れ。」

襖の向こうから低い声がした。

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