ハルモニア~甘い運命 After Storys~
マリッジ・ラプソディ~都side~
7月下旬の、日差しが強くて気温が高い昼前。

私は、背の高い並木が特徴の賑やかな通りを、早足で歩いていた。

折角お洒落して出てきたのに、暑さでメイクが溶けてしまう。
そんな事を思いながら歩いていると、やっと目的地のカフェに到着した。

ふぅ、と一息ついて。
私は、ゆっくりとお洒落なオーク材のドアを開けた。
カランカラン、と軽やかなベルの音がして、涼しい風が頬を撫でる。

受付の店員さんに予約名を告げると、奥の方に案内された。
蔓を編み上げたようなパーテンションを回り込むと、軽く微笑んで手を振る美人が。

私も微笑みを返して、彼女の元へ歩を進めた。

「───お待たせ、杏花さん」


───
──────


──今日は、平日。金曜日だ。
修一さんは仕事で、私は有給休暇。

先週課長から、有給が溜まりすぎなので、無理矢理にでも何日か消化するよう言われたのだ。

近いうちに結婚式もあるから、と言ったんだけど、8月いっぱいまでで1日は取らないといけないそう。
今仕事が落ち着いてるから、来週か再来週で取っておけとの指示だ。

うーん、どうしようかな。

まず、修一さんが休めるかどうか確認した。
案外淋しがり屋の修一さん、休日はとにかく一緒にいたがるのだ。
自分のお友達と会うのにも平気で私を連れて行くので、本当に私がいてもいいのか、毎回ドキドキしてしまう。

それはさておき、今月は修一さんは新規の取引先が2件増えて、他人には任せられないそう。
物凄く残念そうに『休むのは無理』と告げられた。

特に、これから結婚式と新婚旅行で休みを沢山取る。
今から頑張って目処をつけないと、安心して旅行に行けないもんね。

──それならば、ちょっとやりたいことがある。

私は、以前から『いつかランチに行きたいね』と話していた杏花さんに連絡を取ってみる。
杏花さんは凄く喜んでくれて、あっという間に日程と場所が決まった。

杏花さんオススメのカフェで、ちょっと豪華なランチ。

私は、とある決意を持って、お店のドアを開けたのだ。


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