揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
GWが明け、香織の言葉通り、鈴達はいよいよ、それぞれの部署に配置され、部のメンバーの一員として、動き出した。


パソコンを使っての各種書類の作成がメインの仕事だが、電話応対も当然ビジネススタイル。ここらへんも、香織にキッチリ仕込まれた。


「プライベートの通話とは、本当に別物だからね。一本の電話で、取引がダメになることだって、あるんだから。とにかく落ち着いて、ゆっくり丁寧な応対を心掛けてね。」


相手が英語だと、私の出番と鈴は張り切るが、ビジネス英語は耳慣れない言葉も多く、結局先輩に変わってもらうことも出て来る。


「大丈夫、今は何事も勉強。引き継ぐということを覚えるのも大切なことだから。」


「はい。」


得意のはずの英語での応対が上手くいかなくて、落ち込む鈴を香織は励ます。


(学生時代のお勉強が、そのまま社会で通用するわけじゃないんだよね。)


改めてそう実感して、鈴は気を引き締める。


そうした日々を過ごす一方、GWに梨乃から喝を入れられたことを、決して忘れてはいない鈴。


でも正直、今はそちらの方に手を伸ばす余裕はないのが実感だった。


そうして、最初の1週間が過ぎ


「明日はお休みだし、ちょっと気晴らしして帰ろうか?」


という香織の言葉で、鈴達は食事をしていくことに。


「この間のイタリアン、美味しかったですよね。」


未来の言葉に


「うん、でも今日はまた違う所にね。」


と答えた香織が連れて来てくれたのは、台湾料理が楽しめる酒場だった。


「ここなら、女子だけでもお酒が楽しめますね。」


「そう。料理も美味しいから、期待していいよ。」


鈴の言葉に、香織は答える。そして、席に案内されると


「あっ鈴、みんな。」


と声が掛かる。


「ひなた。」


見ると、総務部勢が先に来ている。


(ということは・・・。)


と目を凝らせば、やはり奥の席に達也の姿が。鈴の鼓動は跳ねる。


「神野さん、いらしてたんですか?」


「うん、みんなにせがまれちゃってさ。遠藤さんも?」


「いえ、こちらはどちらかというと、私が主導しました。」


そんなことを言い合ってた先輩2人の話は、じゃせっかくだから、一緒に呑もうかという方向に落ち着いた。


(えっ、達也さんと一緒に・・・?)


思ってもみなかった流れに、鈴の緊張感は、急激に高まる。
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