ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
0.出会い

隆春


 4月。
 2週間の新入社員研修を終えて、配属先が決まった。

「須藤隆春です。よろしくお願いします」

 チームの先輩達の前で頭を下げる。
 暖かい拍手の中、顔を上げる。
 緊張してるから、顔なんて覚えられそうもない。
 大丈夫か、俺。

「じゃあ、中村は本田、須藤は小田島にくっついて、いろいろ教わって」
 課長が言うと、女性と男性が1人ずつ一歩前に出て会釈する。
「小田島です。よろしく」
 男性が言う。俺はこの人に教わるんだ。
 大人の男性という感じ。爽やかさがあって、話しやすそうだ。ちょっとホッとする。

「本田です。よろしくお願いします」
 同じチームに同期はもう1人いる。中村という女性だ。中村さんが教わるのが、この女性。
「たまに出張とかでいない時があるから、その時はいる方に聞いてね。みんな優しいから、誰に聞いても教えてくれるけど」
 柔らかい話し方。聞いていると心地良い、ソフトな声。
 ふわふわっとした印象の人だ。この人も話しやすそうで良かった。

 それぞれのデスクに案内される。
 デスクの島の端、小田島さんの真向かいが俺。
 俺、本田さん、中村さんの順に並んでいる。
 自分のデスク、と思うと、なんだか身が引き締まる。
 小田島さんが、ファイルを俺に差し出した。
「早速だけどこれ。パソコンのセットアップマニュアルだから。終わったら声かけて」
「はい」
 ファイルを受け取る。
 横からソフトな声がした。
「小田島さん、その前に備品の確認ですよ」
「あ、そっか。ごめん、忘れてた」
 備品リストを受け取って、デスクにある物を確認していく。
 隣から、中村さんの低めの声が聞こえる。
「本田さん、他に使いたい文房具があったらどうするんですか?」
「総務にあるかどうか聞いてみて、なかったら注文してもらうの。特殊な物は自分で買って、後で精算ね」
 本田さんの声は、やっぱりソフトだ。

 研修の時の、同期の女性達のキンキンした高い声を思い出す。それだけで頭痛がしそうだった。

 良かった、隣が本田さんで。
 安心して毎日過ごせそうだ。

 とりあえず出だしは順調かな。
 パソコンの設定をしながら、緊張がほぐれていくのを感じていた。




< 1 / 130 >

この作品をシェア

pagetop