転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
一難去ってまた一難……とはまさにこのことだろうか。
一週間前の騒動はリリザという悩みの種をひとつ消してくれたが、新たな悩みも生み出してしまったのだ。
それは……あの日以来、ディーがすこぶる不機嫌ということだ。

サマラが思っていた以上にディーは娘の異性関係に厳しいらしく、彼はあの日家に帰ってくるなり、レヴと親しくすることをサマラに禁じたのだ。
当然納得のいかないサマラは反発したが、彼は今まで見せたこともないほど頑として態度を変えなかった。

しかしサマラは十六歳の思春期であると同時に、中身は酸いも甘いも噛み分けた大人でもある。前世ですでに思春期を経験してきたサマラは、真っ向から親に反抗する愚かさも熟知している。ここはおとなしく「わかりました」といい子を演じるのが得策なのだ。

そんなわけでサマラは表向きはレヴと仲良くしないようにしている。
レヴもディーに『娘に近づくな』と言われたようで、用事でもない限り話しかけてこない。

……しかし。あいにくサマラもレヴも理不尽な命令におとなしく従うような性格ではない。
ディーの目が届きそうな魔法研究所ではほとんど言葉を交わさなくても、ふたりは密かに交流を続けていた。

『レヴ、今日一緒にお昼ご飯食べようよ』

レヴから一番離れた席に座って、サマラは実験の記録をつけるふりをしながら小さな粘土板にメッセージを刻む。すると数十秒後、刻まれた文字が消えて『いいけど、所長は?』とレヴからの返事が粘土板に浮かんだ。

これはレヴが開発した土魔法を使った通信板だ。スマホのメッセージのやり取りに似ている。
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