転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
はじめはアリセルト邸に一泊だけだったディーの滞在予定は一ヶ月に延長され、さらになんのかんのと理由を付けて一月の冬至明けまで引き伸ばされた。
さすがにカレオは冬が来る前にひと足先に王都へ戻ったけれど、ディーは冬至もクリスマスも年越しも、すべてサマラと過ごしてくれたのだった。

だからといってディーが王宮での仕事をさぼっていたわけではない。使い魔の鳥を使って書類を届けたり、水鏡の魔法を使って研究所と通信したりと、屋敷から王宮の仕事をこなしていた。彼のそんな姿を見てサマラは、魔法の世界にもテレワークがあるのだなと密かに感心した。

しかし冬は社交界の季節。人嫌いで舞踏会やお茶会には滅多に出席しないディーも、さすがに国王への新年の挨拶に行かないわけにはいけない。
そうしていよいよディーも王都へ戻ることになったのだが――。

『王都の住まいにお前の部屋を用意させた。俺と離れるのが嫌だと言うなら、一緒に王都で暮らしても構わない』

彼がサマラにそう告げたのは、王都へ出立する三日前のことだった。

滞在期間を散々延長したあげく、まさか王都に一緒に連れていってくれるなんて。予想外の展開にサマラは驚きでしばらく固まった後、ディーに飛びついて喜んだ。
彼は『俺が戻ろうとするたびに泣かれては敵わないからな』とぶっきらぼうに言ったけれど、サマラには父のそんな不器用な優しさが嬉しくてたまらない。
もっとも。その不器用な性格のおかげで三日前まで言いだせなかったせいで、サマラの引っ越しはとてつもなくバタバタしたものになったけれど。

とにもかくにも、サマラはディーと一緒に王都で暮らすこととなった。
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