新人ちゃんとリーダーさん
新人ちゃんとリーダさん

 うう、と呻きそうになった苦しさに、ふ、と意識が浮上した。
 持ち上げたまぶたの向こう側は薄暗く、眼前に何かがある事をぼんやりと認識する。次いで、自身が横を向いて寝そべっている事と、身体に何かが巻き付いている事、そしてその何かが鬼頭さんの逞しい腕だという事を脳みそが理解した。
 と同時に、ひゅいっ!と飲み込んだ息。脳内で再生されるのは数時間前までの己の痴態と、思い出すだけでもくらくらするような色香を纏った鬼頭さんの姿だ。あわわわと歓喜なのか羞恥なのかよく分からない感情が弾けたのはほんの一瞬で、ああでもな、と心はすぐに負の感情が蝕んでいった。
 誘惑に負けて、シてしまった。嫌かと聞かれて、嫌だと言えなかった。「身体と心は別物」「好きでなくとも抱ける」「溜まるものは溜まるから、出す」「定期的にさせてあげないと浮気する」などなど、彼氏持ちの友達が、男とはそういう生き物なのだと常々言っていたように、昨夜の鬼頭さんもそうだったのだろう。
 好きな人がいる。けれど、その人には触れられない。どうにかして奪いたいと言っていた彼の相談にのるも、私はたいした案も出せず全く役に立てなかった。それでもそう「溜まるものは溜まるから、出す」や「好きでなくとも抱ける」は鬼頭さんだって例外じゃない。昨夜はお酒も少しだけど飲んでいたし、雰囲気がどうのは正直分からないけれど、二人きりという状況が拍車をかけたのだろう。ただ、そこに居たのが私だったというだけなのはちゃんと理解している。くだらない勘違いはしない。間違っても「ヤッたからって彼女ヅラすんなよ」なんてセリフを鬼頭さんに吐かせたりしない。普通に出来るよ、大丈夫、大丈夫。

「…………あ……!」

 私はやれば出来る子さ!とメンタルを整えていたところで、はたと気付く。

「……やばい、ハリーさん……っ、」

 今、何時だ。
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