偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
蓮サイド
蓮サイド

待ち合わせの時間を10分ほど過ぎた頃、俺の為に走ってきてくれた彼女に嬉しさがこみ上げた。
彼女は小花柄のワンピースにカーディガンを羽織っていて、制服の時とはまた違う雰囲気で、清楚な中にも色気を感じる。

話を聞くという名目で彼女を誘ったが、本当のところ、居酒屋での彼女の話を盗み聞きしていた上に、既に秘書にも藤原コーポレーションのことを調べさせていたので、大体のことは知っていた。藤原社長の息子は以前にもストーカー行為で女性に軽症を負わせ、被害届けを出されたが、示談となっていた。藤原社長が多額の示談金で、息子の不祥事を揉み消したらしい。
彼女には、このことは言わないでおく。


レストランで、賢明に言葉を選んで話す彼女にずっと見惚れていた。

バーに移動してからは、隣に座る彼女の話や所作の美しさにますます欲しいと思った。

彼女を助けるということを餌にして、あわよくば自分の物にしたいという気持ちが高まる。

純粋で素直な彼女に付け入り、偽りの婚約者というポジションを獲得した。

必ず本当の婚約者になる。俺は心の中で決めていた。
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