嘘吐きな王子様は苦くて甘い
第八章「お話しできなくなりました」
「おはよう!旭君」

「はよ」

「…」

「何」

「へ?い、いや何でも!?ホラ早く行こ!」

あの旭君が…ずっと追いかけてきた、大好きな旭君が…私の、か、か、彼氏。

考えただけでも頭が沸騰しそうだ。

「なぁ」

「な、何!?石原君っ」

自分でも挙動不審なのはよく分かってるけど、恥ずかしくて目すら見れない。

昨日あんな場所で抱き締められちゃったし、お互いに好きって言い合ったし、今更といえば今更なんだけど…

でもなんでだろう、昨日より今日の方が圧倒的に恥ずかしい。

世の中の「彼女」の人達は、どうやって日常生活送ってるんだろう。

自分が旭君にとってそういう立場だって考えるだけで、叫び出しそうになっちゃう私はきっと今普通じゃない。

今日も今日とて世界一イケメンの旭君は、目を細めて訝し気に私を見つめた。

「どした?」

「ど、どしたもこしたもないよ?別に普通っす!」

「ふぅん」

「ア、アハハッ」

「…なぁ」

旭君が私の方に手を伸ばして、私は大袈裟にビクッと肩を震わせた。

今でも立ってるのがやっとな位なのに、もし旭君に触られちゃったら爆発しちゃう!

「は、早く行こっ」

何か言いたげな旭君に気付かないふりをして、私はいつもより何倍ものスピードで学校までの道のりを歩いたのだった。








「ひまりぃー!おめでとう!」

「よかったね、ひま」

お弁当タイム、中庭で食べよう提案をして二人に旭君と付き合えた報告をする。

「ありがとう、二人のおかげだよっ」

「誤解が解けてホントに良かったねぇ」

「石原ムカつくけどね。ちゃんと説明してればひまがこんなに傷付くこともなかったんだから」

「まぁまぁ、石原君って口下手なんでしょ?」

「でも腹立つもんは腹立つ」

「アハハ」

菫ちゃんはサンドイッチを一口かじる。

「しかしまぁ、中学の頃からひまのこと見てる私としてはかなり感慨深いけどね。あれだけ分かりやすかったのに、石原も気付きやしない」

「私そんなに分かりやすかった…?」

「中学の時は特にね」

「ハハ…」

風夏ちゃんはウィンナーを口に放り込みながら、ニヤニヤして私を見た。

「ひまりー、これからラブラブイチャイチャ生活が待ってるねぇー」

「え」

「え?」

固まってしまった私に、風夏ちゃんが声を上げる。

「あ、あのね私…」

「うん」

「あ、旭君と喋れなくなっちゃった…」

「は?」

ぽかんと口を開けて私を見る風夏ちゃんに、カッと顔に熱が集まる。
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