嘘吐きな王子様は苦くて甘い
第十二章「欠片を集めて」
「どうだった?どうだった?」
二時限目終了のチャイムが鳴ってすぐ、テストの答案用紙を胸に押し付けながら、風夏ちゃんが私の席までやってくる。
「うん、まぁまぁかな?世界史が不安だったけど何とかなってよかったよ」
「菫は?いつも通りバッチリ?」
「まぁね」
「流石!私は今返ってきたやつはほぼ平均点ギリッてかんじかなぁ」
三人それぞれ結果を言い合い、まだ返ってきてない教科の点数を予想した。
「あ、ごめん!」
二人が自分の席に戻っていった後。私の席にコロコロと消しゴムが転がってくる。
「はい、どうぞ」
拾って手渡せば、一ノ宮君がニコッと笑った。
「ありがと、大倉さん」
「いいえー」
「テスト、どうだった?」
「まぁまぁかな?」
「俺結構悲惨」
グエッて表情をするから、思わず笑ってしまう。
「…何か久しぶりに話した感じするね!」
一瞬間があったような気がしたけど、一ノ宮君はすぐに明るい声と表情を見せてくれたから私の勘違いだろう。
「元気?って聞くのも何か変だけど」
「アハハ、元気だよ」
「前はホント、やな思いさせてごめんね」
一ノ宮君が言ってるのは、きっと前橋さんのことだ。私と一ノ宮君が校門前で話してる時に前橋さんが割って入ってきた、あの日。
次の日すぐ一ノ宮君は謝ってくれたのに、まだ気にしてくれてたんだ。一ノ宮君は、優しい人だなぁ。
「もう大丈夫だってば!最近、会うと手振ってくれるんだよ前橋さん」
「え、いつの間に仲良くなったの!」
「いい人だよね、前橋さん」
「いいヤツなんだよ!だから何であんなことしたのか未だに分かんなくてさ!」
「私ホントに気にしてないからね?あんなことって、別に変な感じじゃなかったし」
「大倉さん優しいの、前橋も分かってくれたんだな!」
「…」
これは何か複雑な気分だなぁ…
私が余計なこと言える立場じゃないからもちろん何も言わないけど、同じ女の子としてどうしても前橋さんの方に感情移入してしまう。
一ノ宮君の今の気持ちは私には分からないけど、いつか前橋さんの気持ちが届くといいなって心の中で祈った。
「私ちょっとお手洗い行ってくるね」
「ついてかなくて大丈夫?」
「大丈夫、ありがとう」
お昼休み、三人で教室でお弁当を食べて。私はお手洗いに行こうと席を立つ。
この前のことがあってから暫くは二人とも私とずっと一緒に行動してくれてたんだけど、申し訳なくて。
最近は特に何もないし、これで二人の負担を減らせると思うと少しホッとしてる。
トイレのドアを開けると、手洗い場に人がいて。運の悪いことに、旭君と私のことをよく思ってないあの二人組だった。
「…」
一瞬躊躇ったけど、そのまま中に入る。すぐに出れば問題ないよね。
「あのさ」
声をかけられて、私は足を止める。
「大倉さん、石原君と幼馴染みってホント?」
「そうだけど…」
「あーそっかぁ、だからかぁ」
二人で顔を見合わせて、納得したような声を出す。
この前みたいな敵意は感じないけど、薄ら笑いを浮かべたような二人の表情にいい気持ちはしなかった。
二時限目終了のチャイムが鳴ってすぐ、テストの答案用紙を胸に押し付けながら、風夏ちゃんが私の席までやってくる。
「うん、まぁまぁかな?世界史が不安だったけど何とかなってよかったよ」
「菫は?いつも通りバッチリ?」
「まぁね」
「流石!私は今返ってきたやつはほぼ平均点ギリッてかんじかなぁ」
三人それぞれ結果を言い合い、まだ返ってきてない教科の点数を予想した。
「あ、ごめん!」
二人が自分の席に戻っていった後。私の席にコロコロと消しゴムが転がってくる。
「はい、どうぞ」
拾って手渡せば、一ノ宮君がニコッと笑った。
「ありがと、大倉さん」
「いいえー」
「テスト、どうだった?」
「まぁまぁかな?」
「俺結構悲惨」
グエッて表情をするから、思わず笑ってしまう。
「…何か久しぶりに話した感じするね!」
一瞬間があったような気がしたけど、一ノ宮君はすぐに明るい声と表情を見せてくれたから私の勘違いだろう。
「元気?って聞くのも何か変だけど」
「アハハ、元気だよ」
「前はホント、やな思いさせてごめんね」
一ノ宮君が言ってるのは、きっと前橋さんのことだ。私と一ノ宮君が校門前で話してる時に前橋さんが割って入ってきた、あの日。
次の日すぐ一ノ宮君は謝ってくれたのに、まだ気にしてくれてたんだ。一ノ宮君は、優しい人だなぁ。
「もう大丈夫だってば!最近、会うと手振ってくれるんだよ前橋さん」
「え、いつの間に仲良くなったの!」
「いい人だよね、前橋さん」
「いいヤツなんだよ!だから何であんなことしたのか未だに分かんなくてさ!」
「私ホントに気にしてないからね?あんなことって、別に変な感じじゃなかったし」
「大倉さん優しいの、前橋も分かってくれたんだな!」
「…」
これは何か複雑な気分だなぁ…
私が余計なこと言える立場じゃないからもちろん何も言わないけど、同じ女の子としてどうしても前橋さんの方に感情移入してしまう。
一ノ宮君の今の気持ちは私には分からないけど、いつか前橋さんの気持ちが届くといいなって心の中で祈った。
「私ちょっとお手洗い行ってくるね」
「ついてかなくて大丈夫?」
「大丈夫、ありがとう」
お昼休み、三人で教室でお弁当を食べて。私はお手洗いに行こうと席を立つ。
この前のことがあってから暫くは二人とも私とずっと一緒に行動してくれてたんだけど、申し訳なくて。
最近は特に何もないし、これで二人の負担を減らせると思うと少しホッとしてる。
トイレのドアを開けると、手洗い場に人がいて。運の悪いことに、旭君と私のことをよく思ってないあの二人組だった。
「…」
一瞬躊躇ったけど、そのまま中に入る。すぐに出れば問題ないよね。
「あのさ」
声をかけられて、私は足を止める。
「大倉さん、石原君と幼馴染みってホント?」
「そうだけど…」
「あーそっかぁ、だからかぁ」
二人で顔を見合わせて、納得したような声を出す。
この前みたいな敵意は感じないけど、薄ら笑いを浮かべたような二人の表情にいい気持ちはしなかった。