嘘吐きな王子様は苦くて甘い
ーーそれからすぐに先生が何人も来て、その中にいた体育の先生が私をおんぶしてくれて。
そのまま、保健室に運ばれた。
「大倉さん、話せる?大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です」
「呼吸はできる?苦しくない?」
「はい、苦しくないです」
「頭は打ってない?救急車は?」
「き、救急車!?そんなのいらないです!」
ベッドに寝かされて、保健室の女性の先生が私の体に優しく触れながら質問した。
実際、激しく机を倒したりした割には大したことはなくて。
私が勢いよく突っ込んだせいで相手もビックリして私を突き飛ばして、そのまま後ろにひっくり返って机に背中を打って、その打った勢いでまた前に倒れた私。
だけど打ったのは背中だけで、今もジンジン痛むけど我慢できないほどじゃない。救急車なんて申し訳なくてとてもじゃないけど乗れない。
「ひまり我慢すんな」
ベッドの横にピッタリくっついて、今にも泣きそうに顔を歪める旭君。背中の痛みより、その顔を見てるせいで泣いちゃうよ。
それからも保健室の先生に細かく聞かれて、私は素直に答えてるのにその度に旭君が横槍を入れてきて。
他の先生が旭君に授業に戻るように言ったけど、旭君は絶対に私の側から離れようとはしなかった。
「大倉さん、これから病院に行きましょう」
「でも…」
私がここから離れたら、旭君が一人になってしまう。それが嫌で旭君をチラッと見ると、彼は威圧感たっぷりの顔を私にグッと近付けた。
「今余計なこと考えんな、病院行けひまり」
「…うん」
「大丈夫、もうなんもしねぇよ」
「ホント?もう無茶しないでね?」
「無茶してんのどっちだよ…」
「アハハ…」
「ひまり」
旭君は、悲しげな表情で私を見つめる。彼の唇が微かに動いて、だけどすぐにキュッと真一文字に結ばれる。
多分、旭君は謝ろうとした。だけど私がそれを求めてないって思ったから、何も言わなかったんだ。
「私、ちゃんと診てもらってくるね!」
明るく言えば、旭君の表情も少しだけ和らいだ。
「大丈夫?私が支えるから、車まで歩ける?」
「はい、大丈夫です。すいません先生」
こんな時だから仕方ないんだけど、痛みからどうしても姿勢が悪くなっちゃって、お婆ちゃんみたいな姿を旭君に見られるのが恥ずかしいと思ってしまった。
「ひまり?入るよ?」
コンコンと部屋がノックされて、トレーにマグカップとおやつを乗せたお母さんが顔を出す。
「おやつ食べる?」
「ありがと、お母さん」
ベッドから起き上がろうとした私を、お母さんが支えてくれた。
病院で診てもらったけど、背中の骨に異常はなくて。打撲ってことで、暫くはベッドで安静にするように言われた。
病院にお母さんが迎えにきて、診察が終わったらそのまま家に帰って。
お母さんに簡単に事情を話したら、無茶するなって怒られてしまった。
「痛みが強くなったら呼んでね」
「うん、ありがと」
お母さんが部屋を出ていった後、私は自分の部屋の窓に目を向ける。カーテン越しにうっすらと見える、旭君の家。
まだ学校にいるだろう彼のことを考えると、背中より胸の辺りの方がよっぽど痛くて。
早く旭君に会って安心させたいなって、何度も何度も時計を見た。
そのまま、保健室に運ばれた。
「大倉さん、話せる?大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です」
「呼吸はできる?苦しくない?」
「はい、苦しくないです」
「頭は打ってない?救急車は?」
「き、救急車!?そんなのいらないです!」
ベッドに寝かされて、保健室の女性の先生が私の体に優しく触れながら質問した。
実際、激しく机を倒したりした割には大したことはなくて。
私が勢いよく突っ込んだせいで相手もビックリして私を突き飛ばして、そのまま後ろにひっくり返って机に背中を打って、その打った勢いでまた前に倒れた私。
だけど打ったのは背中だけで、今もジンジン痛むけど我慢できないほどじゃない。救急車なんて申し訳なくてとてもじゃないけど乗れない。
「ひまり我慢すんな」
ベッドの横にピッタリくっついて、今にも泣きそうに顔を歪める旭君。背中の痛みより、その顔を見てるせいで泣いちゃうよ。
それからも保健室の先生に細かく聞かれて、私は素直に答えてるのにその度に旭君が横槍を入れてきて。
他の先生が旭君に授業に戻るように言ったけど、旭君は絶対に私の側から離れようとはしなかった。
「大倉さん、これから病院に行きましょう」
「でも…」
私がここから離れたら、旭君が一人になってしまう。それが嫌で旭君をチラッと見ると、彼は威圧感たっぷりの顔を私にグッと近付けた。
「今余計なこと考えんな、病院行けひまり」
「…うん」
「大丈夫、もうなんもしねぇよ」
「ホント?もう無茶しないでね?」
「無茶してんのどっちだよ…」
「アハハ…」
「ひまり」
旭君は、悲しげな表情で私を見つめる。彼の唇が微かに動いて、だけどすぐにキュッと真一文字に結ばれる。
多分、旭君は謝ろうとした。だけど私がそれを求めてないって思ったから、何も言わなかったんだ。
「私、ちゃんと診てもらってくるね!」
明るく言えば、旭君の表情も少しだけ和らいだ。
「大丈夫?私が支えるから、車まで歩ける?」
「はい、大丈夫です。すいません先生」
こんな時だから仕方ないんだけど、痛みからどうしても姿勢が悪くなっちゃって、お婆ちゃんみたいな姿を旭君に見られるのが恥ずかしいと思ってしまった。
「ひまり?入るよ?」
コンコンと部屋がノックされて、トレーにマグカップとおやつを乗せたお母さんが顔を出す。
「おやつ食べる?」
「ありがと、お母さん」
ベッドから起き上がろうとした私を、お母さんが支えてくれた。
病院で診てもらったけど、背中の骨に異常はなくて。打撲ってことで、暫くはベッドで安静にするように言われた。
病院にお母さんが迎えにきて、診察が終わったらそのまま家に帰って。
お母さんに簡単に事情を話したら、無茶するなって怒られてしまった。
「痛みが強くなったら呼んでね」
「うん、ありがと」
お母さんが部屋を出ていった後、私は自分の部屋の窓に目を向ける。カーテン越しにうっすらと見える、旭君の家。
まだ学校にいるだろう彼のことを考えると、背中より胸の辺りの方がよっぽど痛くて。
早く旭君に会って安心させたいなって、何度も何度も時計を見た。