政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
出会いからこれまでの一年


理仁と初めて会ったのは今から一年前、菜摘が二十六歳のとき。理仁はまだ専務で、ミレーヌが出店に加速度をつけはじめた頃だった。


「菜摘、くれぐれも粗相のないように頼んだぞ」


心配を隠さず、和夫がソファで何度も言う。


「うん、わかってる。なにかわからない質問をされたら、おじいちゃんのところへ連れてきてもいいでしょ?」


今日はこれからミレーヌの専務が、農園に来る予定になっている。新規に取引を始めるにあたり、そのための視察だそう。

和夫が案内する予定だったが、昨日、除草作業をしている際に自分の足を鎌で切りつけてしまい歩くのが困難なのだ。代わりに菜摘が案内役を務めなくてはならない。


「もちろんいいけど、菜摘なら答えられない質問はないはずだ。自信をもってやればいい」


祖父である和夫に、菜摘が大地とともに引き取られたのは中学生のとき。それまでは父親の仕事の関係で神戸に住んでいたため、会うのはお盆と正月くらいだった。
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