紅に染まる〜Lies or truth〜
溺愛(side一平)
side 田嶋 一平



12歳になったばかりの頃
親父に連れられて着いた病院で目にしたのは
壊れそうに可憐な赤ん坊だった



「一平、抱いてみろ」



親父から渡されたそれは
ズッシリと重くて温かかった

ほのかに香る甘い匂いと
ジッとこちらを見つめてくる瞳に
お腹の底から湧き上がってくる感情


「可愛い」


生まれたばかりの小さな赤ん坊を
抱っこしたまま

・・・俺が一生守ってやる

そう呟いた


ベッドに座る見知らぬ女を
家族だと紹介した親父

薄々気づいていたけれど
特に反対する理由もなくて

「よろしくね」
優しく微笑む咲《さき》さんに
コクコクと頷いてみせた

これが12歳違いの妹に会った時の話


それから・・・



何度教えても‘お兄ちゃん’とは呼んでくれない愛

『いっぺい』
そう言って微笑んで見上げる
可愛い妹を溺愛した

中学生になると
龍神会の本家へ出入りするようになり

大澤碧斗を支えると決めてからは
家に帰ることが減った

ただ・・・
親父や咲さんから愛が手に負えないと連絡があった時だけは
何を置いても駆けつけた

そんな薄情な俺のことに絶望していたのか
高校を卒業すると同時に
大澤組へと移った俺を徹底的に無視するようになった愛

8歳の愛ができる精一杯の強がりだったのだろう

なるべく月に一、二度は家に帰っては
愛を甘やかした






















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