紅に染まる〜Lies or truth〜
変化



兄とホテルに泊まった翌日
部屋にやって来た颯と共にマンションに送ってもらった


「携帯番号とアドレス」


そう言って差し出された颯の携帯を受け取らず


「気が向いたらね」


それだけ伝えてエレベーターで別れた

最上階で開いた扉の前では


「お帰りなさいませ。愛様」


嘘臭い笑いを貼り付けた三崎が待っていた


「ただいま」


立ち止まらず
門扉を抜けてドアの前に立つと

背後で


「では後ほど」


三崎の声がした

それに反応することなく
玄関のセキュリティを解除してドアを開けた

家に入った途端に感じる不穏な空気


・・・チッ


靴を脱ぎながら感じる違和感


・・・誰か


・・・侵入者アリ


沸々と湧いてくる苛立ちを抑えながら
いつも通りに部屋履きに履き替えて廊下を進む


リビングのドアを開いた瞬間
より強い違和感

別段目に見える変化はないけれど
家主にしか分からない極微量の差異

それに私が気づかない筈もなく


・・・三崎か
大きくため息を吐き出した

ここに外部の侵入は無理だから
犯人は絞られる

この家の鍵は緊急時の対応のために
三崎がスペアを持っている

それは父の許可がないと使えない決まりにもなっているけれど

この要塞に父が足を踏み入れたのは
私が引っ越した日が最後


父の許可が無くても入り放題だよね

若干キレそうになる思考を鎮めるように

いつものように仕事部屋へ向かった

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