紅に染まる〜Lies or truth〜
不自由

兄の運転で着いたのは
龍神会の息がかかる木村病院だった

入り口には既にストレッチャーと看護師数名が待機していて

なんともない私まで車椅子に乗ることになった


「だから〜私の血じゃないってば」


「俺の愛に傷一つあってみろ!
触れた奴全員息の根を止めてやる!」


物騒なことを口走りながら車椅子を押す兄と否定し続ける私を

付き添って歩く木村院長は笑いながら聞いていた

処置室に入ると師長さんがおしぼりで返り血を拭いてくれた


「かすり傷もないわね」


心配そうに付き添う兄をチラッと見て
クスクスと笑った


「だから言ったのに」


鼻でフンと笑って
車椅子から立ち上がった

ベットリ血のついた服を脱ぎ捨てると兄の持ってきたジャージに着替えた

床に落とした血濡れた服をゴミ袋に入れた師長は


「それにしても凄い血よね、またやったの?」


「そうみたい・・・覚えてない」


「ま、愛ちゃんに怪我が無いなら良しとしますか?」


「うん」


子供の頃から知っている師長さんは
何度も癇癪を起こして暴れた私を看てくれている

ある意味、母より私を知っているかもしれない


「運ばれてきたあの子も?」


私が手を掛けたと思った師長さん


「いや、颯は私が気づいて駆けつけた時には既にやられてた」


「え?じゃあ愛ちゃん
あの颯って子を助けるために?」


「・・・」



誰かのために何かをするなんて・・・

誰かを守るために動くなんて・・・



青天の霹靂



うん、たぶん・・・そう




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