紅に染まる〜Lies or truth〜
裏道


「姫ちゃん遊びにおいで」


懐かしい声に誘われて
とびきりお洒落をして出掛ける

シフォンのワンピースにニットのボレロ

毛足の長いファーが縁取る白のポンチョを身につけると


「こんにちは愛様」


出迎えたのは天井さん

部屋の外で会うのは初めてで
スーツ姿に盛大なる違和感

ジッと見つめる私の視線に気づいて

「似合いませんね」
と頬を染めて俯いた


「フフ」


そもそも不似合いを決めるのは
誰の定義??そんな思いを抱きながら

天井さんの運転で出かけた


「向日葵に寄って」


「畏まりました」


最近出来たカフェのケーキが美味しいとネットで見つけたから

お土産にしようと寄り道をお願いした

駐車場に車が止まると
天井さんと一緒に店まで歩いた


・・・隣に並ぶと背が高い


これも採用の基準かと
込み上げる笑いを飲み込んだ


店内に入るとカフェブースに溢れる女性が一斉にこちらを向いた


「チッ」
 

「舌打ちはいけません愛様」


天井さんの小さな声がする

それと同時に
女達の悲鳴にも似た声が上がった


「「「イケメン」」」


「「でも彼女持ちよ」」



聞こえるか聞こえないかの
微妙なラインで届く女達のヒソヒソ話が
耳についてウザい

ケーキの注文を取りに出てきたスタッフに


「適当に詰めて」


最悪の客振りを発揮して
助け舟のために
天井さんを置いてベンチに座った






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