カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
エピローグ
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「桃、結婚おめでとう」

「ありがとう優子。その着物、よく似合ってる」

「ふふ、美澄屋さんで調達したの。桃の白無垢もすごく綺麗よ」


 三月某日。都内の神社で神前式が執り行われている。白無垢を身にまとっている自分を、以前は想像できなかった。

 隣にいるのは、五つ紋付きの羽織袴を着こなした千里さんだ。

 政略結婚のお見合いを経た私たちは、今日、本当の夫婦になる。

 咲き誇る桃の花を見ると、一年前の優子の結婚式を思い出す。未婚の証である桃色の振袖に視線を落とし、自由に恋愛ができない境遇を嘆いて憂鬱な気分になっていた。


『いつか、この着物が綺麗な白無垢になった時、私は心から幸せだと言えているのかしら』


 そんな心の声を漏らしていた過去の私が、脳裏をよぎる。

 落ち込んでいた数秒後に、前方不注意の私は、穏やかで誠実で、理想の王子様のような男性とぶつかって。

 そんな人と恋がしたいなんて思った矢先、お見合いが嫌で家出して、慣れないバーで出会った男性に口説き落とされてしまう。

 彼の正体を知った見合いの日、素性を隠して私をからかった危険な人だと警戒するけれど、新たな一面を知るたびに惹かれていって、愛されたいと思いはじめた。

 色々なことがあったけれど、全部、千里さんと一緒だから乗り越えられたんだ。

 隣を見上げると切れ長の瞳と目が合い、誰にも気づかれないようにそっと指を絡めあう。
 
 きっとこの先、なにがあっても大丈夫。

 私を誰よりも大切にしてくれる、愛しい旦那様とふたりなら。








ー完ー

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