カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 さらに、友人だけならまだしも、天沢家のしがらみは交際相手にまで及んでいた。

 初めて好きになった同級生も、アルバイト先で出会った青年も、全員親のせいで別れさせられてきたのだ。


『どこの馬の骨かも分からない男となんて、付き合わせるわけにはいかない』

『桃には、安定した将来を送れる方と結婚してほしいわ』


 どこの馬の骨かも分からない男?安定した将来?

 今どき、家柄で交際相手を絞られなければいけないなんて間違っている。私の生きている世界は、ロミオとジュリエットの世界線なの?

 私にだって、理想の男性像がある。

 優しくて、頼りがいがあって、真面目な方。どんな話も聞いてくれて、一緒にいて穏やかな気持ちになれる人がいい。

 容姿に関してはあまり多くを望まない。清潔そうな外見であってほしい、というのが唯一の希望だ。

 私は、一度も染めたことがない母譲りの黒髪に、丸くぱっちりとした二重の童顔である。

 誰もの心を掴む美貌を持っているわけではないため、平凡な外見を好んでくれる男性がいれば、それで良い。

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