黒王子の溺愛
思い出の男の子
綺麗に整えられた日本庭園の、橋の上で着物を着た私は泣いていた。
どこまでも、青い空で、とても良い天気だ。
なのに、とても悲しくて。
「どうしたの?」
優しい男の子の声。
男の子の声で、私は顔を上げる。
その子と目が合った。
その子はとても優しい目で、私を見ていた。
その日は私は、綺麗に整えられた着物を着ていて、髪も整えてもらっていた。
大人達の会合は、子供の私にはつまらなくて、その会場をこっそり抜け出したのだ。
興味から、ふと覗き込んだ、日本庭園の橋の上で、お気に入りの髪留めを、池の中に落としてしまった。
「っあ…」
一瞬、手を伸ばしたけれど、届くはずもなく、水の中に沈んでしまう、お花を悲しい気持ちで見ていることしか出来なかった。
それが、悲しくて、悲しくて、
泣いていたのだ。
「髪留め、お花がついているの…落としちゃって…。」
「池に?落ちちゃったの?」
優しく、男の子は私の頭を慰めるように撫でて、そう聞いてくれた。
私は頷いた。
「お花…大好きなの…。」
もう、返ってこない…そう思うと、また目に涙が滲んでくる。
半ズボンにテーラードのジャケットを着ていたその男の子は、迷いもせずに、池に入った。
「どの辺?」
「えっと、橋の近く…。」
私は驚いたし、彼の服が濡れてしまうのが気になって。
けれど、橋のあたりを手探りで、真剣に探してくれる彼の顔を見て、何も言えなくなった。
すごく、素敵で、ドキドキしたから。
「見つかんない…。」
その時、女性の声が聞こえて、人がたくさん駆け寄ってきて、彼は池から出されて、ずぶ濡れだったせいか、どこかに連れていかれてしまった。
私はそれを見送る事しか出来ず……
私も、しばらくして、私を探しにきた父に抱き上げられた。
どこまでも、青い空で、とても良い天気だ。
なのに、とても悲しくて。
「どうしたの?」
優しい男の子の声。
男の子の声で、私は顔を上げる。
その子と目が合った。
その子はとても優しい目で、私を見ていた。
その日は私は、綺麗に整えられた着物を着ていて、髪も整えてもらっていた。
大人達の会合は、子供の私にはつまらなくて、その会場をこっそり抜け出したのだ。
興味から、ふと覗き込んだ、日本庭園の橋の上で、お気に入りの髪留めを、池の中に落としてしまった。
「っあ…」
一瞬、手を伸ばしたけれど、届くはずもなく、水の中に沈んでしまう、お花を悲しい気持ちで見ていることしか出来なかった。
それが、悲しくて、悲しくて、
泣いていたのだ。
「髪留め、お花がついているの…落としちゃって…。」
「池に?落ちちゃったの?」
優しく、男の子は私の頭を慰めるように撫でて、そう聞いてくれた。
私は頷いた。
「お花…大好きなの…。」
もう、返ってこない…そう思うと、また目に涙が滲んでくる。
半ズボンにテーラードのジャケットを着ていたその男の子は、迷いもせずに、池に入った。
「どの辺?」
「えっと、橋の近く…。」
私は驚いたし、彼の服が濡れてしまうのが気になって。
けれど、橋のあたりを手探りで、真剣に探してくれる彼の顔を見て、何も言えなくなった。
すごく、素敵で、ドキドキしたから。
「見つかんない…。」
その時、女性の声が聞こえて、人がたくさん駆け寄ってきて、彼は池から出されて、ずぶ濡れだったせいか、どこかに連れていかれてしまった。
私はそれを見送る事しか出来ず……
私も、しばらくして、私を探しにきた父に抱き上げられた。
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