黒王子の溺愛
黒澤颯希
その翌朝、柾樹が何時に起きてくるのか、分からなかったため、美桜は5時には起きて、準備を開始した。

この日のために、千穂さんにお料理から、お掃除から、家事を仕込んでもらったのだ。

5時半頃、ぼうっと起きてきた柾樹はダイニングの入口で、美桜の姿を見て、固まっている。

「おはようございます。」

昨日、柾樹に『泣くのではなくて、どうすればいいかを考えろ』と言われた。

美桜なりに、考えて出した結果だ。
柾樹さんを信じて支えよう。
まずは、自分にできることをする。

「……あ、…」
柾樹はようやく思い出したようだ。
「そう…か…。」

「シャワー、浴びていらっしゃいます?ご飯、用意しますけど。何がいいか、分からなかったので、パンとご飯、どちらがいいですか?」
「あ、今日はいい。悪いが、朝はあまり強くなくて。食事を取る気にならないんだ。」

「ごめんなさい…。聞いておけば良かったですね…。」
「いや。あと…、無理しなくていい。」

にこりともしないで、そう言って、柾樹はバスルームに向かう。

気にしちゃダメ!
まだ、始まったばかりだもの。
知らなくて当たり前なのよ。

これから、少しずつ覚えていけばいい。
今日だって、一つ分かったではないか。

それに、寝惚けている柾樹は、ちょっと呆然としていて、きっと、本当に朝が弱いのだ。
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