黒王子の溺愛
黒王子の溺愛
「大丈夫か?疲れていないか?美桜…。」
「はい。大丈夫です。柾樹さんは…?」

「俺は慣れているから。まあ、疲れていても、たいしたことはない。」

2人の婚約の発表は、お互いの立場上、大々的に行われた。

日中に対外向けの会見を行い、夕刻からは、身内や取引先を招いての婚約パーティーだ。

パーティとは言っても、実際のところは、美桜のお披露目であり、ご挨拶が中心のものになる。

お人形のような美桜と、顔立ちの整っている柾樹。
お似合いの二人だと、会場からはため息がこぼれていた。

また、その日の美桜は、綺麗な着物と、柾樹に愛されている、という幸せで、殊更に綺麗なのだった。

「いやぁ…、経済界の華、と称される美桜さんと、黒王子と呼ばれている黒澤くんと、本当にお似合いだし、経済界にも明るい話題で嬉しいよ。藤堂グループも黒澤くんが引き継ぐのであれば安心だな。」

「華…?」
美桜は、横に立っている柾樹に尋ねた。
この、パーティーの間、柾樹が美桜の側を離れることは、片時もない。

「美桜はそう呼ばれているんだよ。しかし、美桜の華はわかるけど、僕の黒王子…?初めて聞いたな、そんな呼び名。」

そんな風に、呼ばれていることなど知らない柾樹は、その整った顔で、ひっそりと眉を寄せる。
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