旦那様、離婚はいつにしましょうか~御曹司と清く正しい契約結婚~
不器用な彼の包容力
――相馬さんと出会ったのは、四カ月ほど前。

 平年より早めの初霜(はつしも)が観測された寒い日のことだ。


「終わったー」


 昼ご飯もパスして黙々と片付けていた仕事が一段落して、伸びをする。

 私は十二階の休憩室に向かい、自販機で甘いコーヒーを買って窓際の席に座った。

 ここから見えるいくつかのビルは、我が社、大東不動産が手がけている。
 私が担当したわけではないけれど、この景色を見ると、なんとなく誇らしい気分になる。


 大東不動産は、不動産業界では日本で三本の指に入る規模を誇る。

 最近急成長を遂げている『宮城(みやぎ)不動産』としのぎを削り、将来は現在頂点に君臨する旧財閥系不動産会社を押しのけて、ツートップを張るのでは?なんて噂されるくらい勢いがある会社だ。


 私は大学を卒業したあと、大東不動産の事業企画部で働き始めて六年になる。


< 22 / 74 >

この作品をシェア

pagetop