離婚前提マリアージュ~エリート副社長と育てる愛の花~
カモフラージュ
老舗百貨店『高屋』
創業は明治時代。呉服店から始って、貿易業を営んで、『帝都百貨店』と並ぶ老舗デパートへと成長した。
本店は銀座の一等地に構え、横浜、名古屋、大阪、福岡と全国の主要都市に点在。
中国の大手旅行会社を提携し、銀座本店を中心にインバウンドの需要をいち早く取り込み、従来の百貨店の有り方を見直し、時代の変遷を踏まえて、ショッピングセンター(SC)化へと変貌させつつある。
その創業一族が高屋家。
代々、創業一族で引き継がれ、今の社長で丁度七代目。
副社長は何れ、その八代目となる。
だから、私とは釣り合いが全く取れていないアンバランスカップル。
まぁ、大切な取引先銀行・大手メガバンクの『花菱銀行』の頭取令嬢のお見合いを断るカモフラージュだし、酔った勢いで副社長に蛮行を働いた罪滅ぼしはしないと。

会議が長引き、副社長は正午過ぎに戻って来た。

「んっ?世良は?」

「先に食事に行かれました…」

「そうか…」

「本日の会議は長引かれたようですね…」

「まぁな」

副社長は頷き、リクライニングチェアに腰を下ろしても資料を眺め続けた。

「コーヒー淹れますね…」

「頼む」

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