ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~

②~かぼちゃの馬車と王子様~

静まりかえった部屋の中で、だんだんと落ち着きを取り戻した私はキョロキョロ辺りを見回し副社長室を探索していた。

会社勤めなど無縁な私は、初めて足を踏み入れたこの空間が、物珍しくて仕方がない。
なかでも私が目を奪われたのは、重厚感のある座り心地が良さそうな副社長のデスクの椅子。
柔らかな革張りの黒い椅子にそっと触れて、ためらいながらも恐る恐る腰を下ろす。

「うわぁ、すっごく快適!何時間でも座ってられそう!
いいなぁ、これ。家にもほし〜ぃっ!」

子供のように、床を蹴り上げくるくる回転しながら遊んでいると、乱雑なデスクが目に入り、多忙なのか片付けが苦手なのか、迫田さんの日常を垣間見た気がして思わず笑みがこみ上げる。

「うわぁ、きったなぁーい。
こんなんであの人ホントに、副社長なのぉ。ふふっ」

逆回転でくるくる回りながら遊んでいると、突然開いた扉に油断していた私はすぐに反応することができなくて。
くるりと椅子が1回転する様子を目を丸くして見つめる迫田さんを視界の端にとらえながら、私は椅子から飛び降りると恥ずかしくてそのまま背を向けた。

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