ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~

②~現実は切なくて~

恋人のふりをしてから数日後、ヒルズ内を歩く度に嫌な視線が突き刺さる。

はじめは気のせいだと思っていた。

だけど、睨むような女性の視線を感じることが増えてきて…。

もしかしたらとあの日のことが思い当たった。

たぶん…

あの日、手を繋いで歩いたり、担がれて副社長室に連れて行かれて、そして…見合いの為に着飾って二人並んで歩いて。

そんな私達の姿を誰かに目撃されていたのだろう。

休日とはいえ、何しろ迫田さんは有名人だ。
あんな目立つ人、見かけただけで誰だかすぐにわかるし、一緒にいる私だって注目されたはずだ。

そういえば!!

迫田さん、守衛さんに恋人だって言ってなかった⁉

ことの重大さにいまさら気づき、頭がくらくらする。

もしかしたら…迫田さんの恋人のふりはあの日だけで終わりではないのかもしれない…。

心臓が嫌な音をたてはじめる。
これ以上そばにいたら私は…。

頭に浮かびかかったその答えを打ち消すように頭をふる。
気のせいだっていいきかせ、あの人にはこれ以上絶対に近づくべきではない。

それなのに…。

「小谷さん、お疲れ様。
あぁ、そうそうおめでとう。婚約したんだって」

「えっ⁉」

守衛室から顔を覗かせにこにこして話しかけてきた守衛さんの言葉に息が止まりかけた。

「あれ?内緒だった?
んー、そんなことないか。SAKOTAリゾートの女子社員たちが大騒ぎしてたもんなぁ。
社内メールで副社長の婚約発表があったって。
その話がここのテナントの女性従業員にも伝わってここのところ迫田ファンが肩落としてるもんな」

こっこっ婚約!!

思わず声に出して叫びかかった言葉をそのままごくんと飲み込んだ。
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