誰にも教えてアゲナイ!
心は謎めいて?
コイツの言った事を無視して、無言でドアの鍵を開けた。

ドアを開けて閉めようとすると…

「入れてくれないの?」

と得意の子犬のような寂しげな表情をして聞いてきた。

負けちゃ駄目、負けちゃ駄目なんだけれど、寒い中、来てくれた事、待っててくれた事を考えると入れてあげたくなった。



……って、後付けがましい?



「質問に答えたらいいよ。どこから来たの?」

「ははっ、この隣のアパートからだよ。2棟の201号室、椎名さんち」



え?隣のアパート?

私が住んでいるアパートは、2DKと3DKが有り、広さで棟が分かれている。

ウチが2DKで、隣のアパートは3DK。

「実は…昨日の昼間に引越して来て…、俺が学校行ってる間だったんだけど…。

つまり、間違えちゃったんだよね、1棟201と2棟201をさ…」

「そうなんだ…じゃあ、入っていいよ」

「有難う、百合子」

玄関越しに話していた私達。

寒いから勘弁してやる事にして、詳しくは中で聞こうっと……!

エアコンのタイマーをセットしておいたので、程よく暖まっている部屋。

図々しくも、くつろぎ出す奴。

「またくつろいでるし……。今日はお腹空いてないの?」

「うん、食べて来た」

昨日とは違う私服の彼は、可愛いさが増しているようだった。
< 11 / 55 >

この作品をシェア

pagetop