身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
3.会いたい、なんて言われても



ひずみはどこで生まれていたのだろう。
私は修二のことが世界で一番好きだったし、修二もまた私のことをたったひとりの女性として愛してくれた。修二は誠実だった。私をぐいぐい引っ張ってくれる頼もしさもあった。
だけど付き合ううちに変化を感じていた。慣れによる互いへの主張の強さといえばいいのだろうか。遠慮がなくなっていくうち、喧嘩は増えた。もともと私も修二も言葉が強く性格もきついほうだ。
それでも、私は修二が大事で、彼の変わらぬ愛情も知っていた。喧嘩をし、仲直りをする。その流れもきっとふたりの絆を強めてくれているのだと信じていた。

私が二十六の年、私の仕事に大きな変化があった。本社への異動の話が出たのだ。
本社はアメリカ。海外勤務になる。これは同期の中では、一番出世の人事だった。受けない理由はない。

『ロサンゼルスの本社に異動って言われたの。春から』

修二に話をするとき、戸惑わなかったわけじゃない。だけど、修二は理解してくれると思っていた。案の定、彼は一瞬驚いた顔をしたものの、即座に頷いてくれた。

『陽鞠の夢が叶うじゃないか。おめでとう。お祝いしないとな』

修二は弁護士事務所に在籍して二年目だった。私について仕事をやめるなんてことはあり得ないとわかっていた。
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