ズルくてもいいから抱きしめて。

天城の場合

俺にとって神崎は、つい構ってやりたくなる可愛い妹みたいな存在だった。

表情豊かで、人懐っこくて、小さくてフワフワした女の子らしい見た目もそう思わせていたのかもしれない。

その神崎を“女”として意識したのは、たぶんあの夜だろう。



「よしっ!今週もよく働いた!神崎、飲みに行くぞ!」

「おっ!良いですね〜行きましょう!」

俺と神崎は、俺が神崎の指導係だった頃から気が合うのでよく飲みに行っていた。

お互い恋人も居らず、気兼ね無く誘える間柄だった。

俺たちが帰り支度をしていると、部署の入り口の方から声がした。

「あっ、良かった!まだ居た!神崎さ〜ん!」

声のする方を見ると、他部署の男だった。

あいつは確か、、、最近よく神崎に声を掛けてくるやつだな。

「ねぇ、神崎さん!今日みんなで飲みに行くんだけど、神崎さんも一緒に行かない?」

「えっ?今日ですか?でも、今日は天城さんと先に約束しているので、、、」

神崎、めっちゃ困ってんじゃん。

こいつ、こういう誘いはいつも断ってたしな〜

たぶん苦手なんだろうな、、、

「え〜いつも2人一緒じゃん!もしかして2人付き合ってる!?」

「ちっ!違いますよ!天城さんは、私のこと可愛がってくれてるだけです!」

「本当に違う?じゃあさ〜天城さんも一緒ならOKしてくれる?」

「えっと、、、」

神崎は困ったように、チラッと俺を見た。

「はぁ〜分かったよ!俺も一緒に行ってやるよ。」

こうして俺と神崎は他部署のやつらと飲みに行くことになった。
< 17 / 101 >

この作品をシェア

pagetop