婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
婚約履行へのステップ1
 株式会社クリムソンは、六本木の複合タワーにオフィスをかまえている。事業拡大にともないオフィスも増床し、25階と26階のツーフロアを借り上げることにしたのはつい先月のことだ。

「すっご〜い! 広くてオシャレなオフィス。私もこんな会社でOLさんしてみたかったぁ〜」
「立花さんならうちは大歓迎だけど……なんて言ったら、マネージャーさんに怒られちゃうかな」
「当たり前です! 立花モモはうちの看板女優になれる逸材ですから。いくら桂木社長といえど譲れませんよ」
「だって。残念〜桂木社長の秘書になりたかったのになぁ」

 甘ったるい声でそう言って、上目遣いに宗介を見上げるのはタレントの立花モモだ。人気アイドルグループを卒業し女優への道を歩み始めたばかりの、大手芸能事務所イチオシの若手だ。
 日本人男性の好む愛らしい童顔とモデル顔負けのすらりとしたスタイルのギャップがウリで、たしかに人目をひくオーラがある。だが、声があまり良くないし女優として大成するかは五分五分かなと宗介は見ていた。
 とはいえ、彼女は抜群の知名度と好感度を誇るわりにはギャラがお手頃だ。今が旬で勢いがあるし、商品価値は高いと言える。
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