【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
第一章 横屋敷家の全て。

第一章 横屋敷家の全て。




例えば人生のリセットボタンがあるとしたら一体いつからやり直すだろうか。

どこからがこの人生の間違いだから分からないから、私はリスタートは切らない。 この人生は捨てていく。

人魚姫のように泡になって跡形もなく消えていけたら、それはそれで良い。 ’愛されたい’ただそれだけを願っていたのに、神様は私にそんな小さな願いさえも与えては下さらなかった。

誰か、誰か、私はここに居る。 夜の帳に包まれずっと静かに祈り続けていた。 その願いが誰にも届かないと知りながらも。


11月の夜の海は広く冷たくどこかもの悲しい。境界線なんて見えずに、どこかへ吸い込まれていく様な恐怖。波は規則的なメロディーをただただ奏でていくだけだった。

真っ暗闇の中、どこまでも続いていく水平線。 闇の中真ん丸のお月様だけが濁った空に浮かび、水面へと映し出される幻想的な夜だった。

私は履いていたスニーカーを脱いで裸足になり、ゆっくりと打ち付ける波間に足をつける。

「つめた……」

着ていた黒のジャケットを脱ぎ捨てて、薄いワンピース一枚になりゆっくりと波に誘われるように足を進めていく。

足先からジンジンと痺れていく。 砂のざらざらとした感触が足の裏をすり抜けていく。 気が付けば、波は顔を覆おうとしていた。

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