Water lily〜許されぬ罪〜
まだまだ夜明けには程遠い午前二時。当然辺りは暗い。そんな中、私ーーーアーシャはまともに舗装されていない山道を歩いていた。登山には適さない白衣を羽織って。

一歩を踏み締めるたびに足が重くなる。パンプスじゃなくてスニーカーを履くべきだったかな。でも、後悔する暇なんてない。私はこれから死ぬんだから……。

ろくに運動なんてしてこなかったから、まだ三十代だというのに息が上がってしまう。研究室に篭っていたせいだ。

「綺麗……」

街明かりが遠くに見える。とても華やかで綺麗だ。最期にこんな景色が見れるなんて少し幸せかもしれない。

私は、大きな罪を犯した。その償いのために今日自ら命を経つことを決めたんだ。

全ての始まりは、私が愚かな研究をしてしまったあの日ーーー。



「今日も暗いニュースばっかりね」

私は新聞を手にため息をつく。この世界は今戦争中だ。あちこちの国がぶつかり合い、多くの人が犠牲となっている。
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