耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
*登場人物紹介&これまでのあらすじ*
【登場人物】

*杵島美寧(きじまみね):怜に拾われた美少女。喫茶店アルバイト。純真無垢。

*藤波怜(ふじなみれい):眉目秀麗な私立大学准教授。趣味は料理

*マスター:美寧がアルバイトをする【カフェ ラプワール】の店主。

*奥さん:マスターの奥さん。時々ラプワールに顔を出す。

*久住涼香(くずみりょうか):旧姓柚木(ユズキ)。怜の大学時代からの友人。美寧の主治医。小児科医。



【これまでのあらすじ】

梅雨のとある雨の日。
公園で熱を出し倒れていた女の子を、たまたま通りかかった怜が見つける。

「おい、きみっ。家はどこですか?名前は?」

そう訊ねた怜に、意識が朦朧としたまま彼女は答えた。

「…ま…み、ね…」

「……ma minette(こねこ)?」


怜は自宅に彼女を連れ帰り、熱が下がるまで面倒を見ることにした。

どこからやってきたのか素性も何も語らない彼女は、熱が下がっても食事をほとんど取らない。それどころか食事自体を厭う気配すらある。
彼女を診察した友人医師の見立てでは『栄養失調』とのこと。
食が細い彼女に何とか栄養を取らせようと、怜は工夫を凝らしながら食事を作っていった。

体調が戻っても彼女は自分の家に帰る気配はなく、そのまま自然と一緒に暮らすように。

一見クールに見えるが心優しい怜に美寧は心を許し、怜はいつしか純真無垢な彼女のことを愛おしく想うように。

静かな二人暮らしの中で心寄せ合う二人。
どこか育ちの良さを漂わせる美寧は、男女のあれこれを全く知らず、彼女がうっかり発した『恋人練習』は少しずつ進み、二人の関係も少しずつ深まっていく。

アルバイト先のマスターや奥さん、怜の友人で美寧の主治医の柚木涼香、色々な人たちに見守らながら、ふたりの日常はゆるりと流れていく。


そして晩夏のとある日。
二人で行った水族館の帰り、美寧はついに自分が怜に拾われることになった経緯(いきさつ)を語った。

幼い時に母を亡くした彼女は、長い間祖父の家で暮らしていたという。
一年ほど前に祖父が亡くなったのを機に、生家である父の家に戻る。そこで彼女を待っていたのは孤独な毎日だった。

祖父を亡くした悲しみと、誰とも触れ合いのない孤独が彼女から食欲を奪っていく。そんな中、父親から知らされた『許嫁』の存在。

それから数か月、食事を取らないことを誰にも気付かれずに過ごし、やせ細った彼女に気付く者もいなかった。

そして顔も名前も知らない『許嫁』との顔合わせの前日。
何もかもに耐え切れなくなった美寧は、衝動的に家を飛び出した。

体力も気力もない美寧は、雨に濡れた紫陽花の茂みの中で倒れてしまったのだった。


「あの日、紫陽花に守られたあなたを見つけられて良かった」

美寧の告白を聞いた怜は静かに言った。

「あなたが辛い時は俺がそばにいる。だから、ずっと俺のそばにいて―――愛してる。美寧」


自分が父親から逃げ出したことを怜に告白し受け止めてもらえた美寧は、自分の怜に対する恋心を告白し、二人は正式に恋人同士となった。


そうして美寧と怜は、二人で過ごす毎日を大切に過ごしていた。


が――――



(本編へ続く→)
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