君にずっと恋してる〜叶わない恋だとしても〜
「何か飲む?」

剛さんは、アイスコーヒーを飲んでいた。

…大人だな。

「はい」私はうなずいた。

「すみません」

剛くんは、手をあげて定員さんを呼んだ。

「剛くん、珍しいね〜。女の子と一緒なんて」

定員さんが話しかけてきた。
名前もしってるって、剛くんは、常連客のようだ。

「まぁ。尋斗の見舞いの合間に来てるからなぁ〜。ってか、彼女は、いないけど。笑」

笑いながら、返事をした剛さんは、
尋斗さんそのものだ。

私は、剛くんを食い入るように 見つめた。

「何飲む?」

彼がこちらを見た。

しまった!

目を泳がせながら、
慌てて目線を下に逸らせた。

「あっ、ミックスジュースを…
よ、陽子は?」

見ていた事がバレた?

そう思うと恥ずかしくて
目線を下に向けたまま話した。

「私は、アイスレモンティーをお願いします」

「はい、かしこまりました。」

定員さんが返事をし、
用紙に注文を書いて、そっとテーブルに置いた。


剛くんは座り直し姿勢を正して 
私をじっと見た。

私も剛くんと目を合わせて、剛くんが話し出すのをソワソワしながら待った。

注文した飲み物がテーブルに置かれ
私は、まず喉をうるわせた。

「尋斗の事なんだけど…」

私は口に含んだミックスジュースを
ごくりと音を立てて飲み込んだ。

「あいつ、自転車で駅に向かう途中に
信号無視した車にぶつかって。
相手は、携帯を見てたみたいで、雪の日だったから地面が少し凍ってたのか、
スリップして」

私は息を呑んだ。

「尋斗は、今、意識がないんだ。
ベッドでずっと寝てる。
植物人間っての?
たまに、ピクリと動くし、目が覚めるって
親も毎日尋斗に話しかけて」

…えっ?意識がない?…植物人間?

剛くんが何を話してるのか、すぐ理解できない。頭がグルグル回る。

膝の上に置いている手を、陽子が
ぎゅっと握りしめた。

私は、チラリと陽子を見た。


陽子は、真っ直ぐ見たままだけど
すごく真剣な眼差しだ。

「あいつ…。馬鹿だよなぁ」

悲しそうな目をしながら剛くんは 笑った。


少しずつ、頭にパズルが埋め込まれる。
尋斗くんの現状を…理解した。

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